再会

午後七時、私は彼を五反田のニューデイズ前で待っていた。
月曜日、残り四日の勤務に備え早く帰宅したのだろう、サラリーマンがいそいそと足早に通りすがる。
​日々のルーティンをこなし進んでいく周囲とは裏腹に、ぽつんと違う世界を生きているように、一人彼の到着を待っていた。
初めて彼と出会ってから三週間が経過し、正直彼の顔はぼんやりとしか思い出せない。人の顔の記憶なんてそんなものだ。思い出そうと目をつむっても写真のようにはっきりとは思い出せない。毎日思い出したくて記憶をなぞり、あの瞬間を何度も何度も繰り返した。彼に出会ったあの日から、毎日彼から連絡がきた。
「おはようまい」から朝がスタートし、「まいおやすみ」で一日を終える。私の日常に入り込み、まるで恋人からの連絡のように嬉しくて、会えない時間も彼のことばかり考えるようになっていた。​
一回限りの遊びのつもりだった。全く自分とは住む世界の違う男の子だと思っていたのに、こんなにも自然で付き合っていてもおかしくない男の子が来るとは思ってなかった。
午後七時・・・夕食はすましているだろうか。微妙な時間を選んでしまった。彼を食事に誘ってもいいのだろうか・・・正直手持ちも多くはない。二人分の食事代が支払えるところといえば、よく言っていた格安居酒屋だが、そんなところに誘ってもいいのだろうか・・・